「円周率3.14」は教科書信仰
ちょっと前の話になりますが、長野県の近藤さんが円周率を小数点以下10兆桁まで算出することに成功したそうです。円周率の計算というと、東大の金田先生を連想してしまうのですが、現在のタイトルホルダーは近藤さんとのこと。全くもってすばらしい話だと思います。おめでとうございます。
このニュースを、2011年10月18日付けの日本経済新聞1面の春秋(朝日新聞でいう天声人語)が以下のように取り上げていました。この結びが驚くような内容だったので是非紹介させていただきたく、リンク切れを避けるために全文引用させていただきます:
3.141592653589793…と果てしなく続く円周率。この小数点以下の不思議な数字を、人類はずっと計算しつづけてきた。1万桁まで解き明かしたのは半世紀ほど前。1973年には100万桁まであぶり出している。
「追求」は加速する一方だ。近年、東大チームがつくった世界記録は32億桁から2061億桁、さらに1兆2411億桁へと、まさに桁違いの更新ぶりだった。そしていまは長野県飯田市の会社員、近藤茂さん(56)の独壇場だろう。5兆桁という自らの記録をたった1年で塗り替え、ついに10兆桁にこぎ着けた。
円周率の計算は学生時代からの趣味で、5兆桁も10兆桁も自作のパソコンで達成したという。どこそこの研究者ではなく市井の人の快挙だ。10兆桁目の数字は5だったそうだが、それを見届けようとするあくなき好奇心が記録を生む出すのかもしれない。そこに円周率があるから、というほかない挑戦なのだろう。
小学校では円周率を3と教えている、という批判がかつてあった。じつは学習指導要領には、場合によっては3でもいいと書いてあっただけだ。円周率は3.14。誰もがそうすり込まれてきたから当惑が広がったに違いない。教科書信仰ゆえの騒ぎだったのだろう。近藤さんは、次は20兆桁に挑むそうだ。
過去に、学習指導要領で円周率を3と教えても良いと書かれていたことがありました。それは一時大きく批判されていて、東大の入試ではそれに反論するような問題が出題されたこともありました。このような批判は、それまでの教科書によって円周率は3.14とすり込まれていた影響、つまり教科書信仰ゆえの騒ぎだったと述べられているのです。
何を言っているのでしょうか。
ほとんどの批判の主張は、円周率は3よりも大きな値であるのに、それを3という整数に丸める点に集中しています。半径1の円に内接する正六角形を考えると、正六角形の辺の長さの合計は6ですが、円周率を3としてしまうと、円周の長さも6となってしまい、おかしなことになってしまうのです。図形的に、明らかに3より大きな(円周率という)値を3に丸めてしまうのがおかしいと批判しているのです。それまでの教科書で円周率は3.14と教えられていたから、そうであるべきだと批判しているわけではないのです(東大の入試問題もこのような直感を掘り下げた問題で、入試界では良問として有名なんだそうです)。
日経の記者はもっと数学センスというか理系センスを磨くことをお勧めします。
| 固定リンク
「新聞記事」カテゴリの記事
- 「円周率3.14」は教科書信仰(2011.10.18)
- 朝日新聞: 『ネット暗号に2010年問題~次世代規格への対応難題~』(2010.01.24)
- MD5: パスワード用ネット暗号 高速の解読法発見(2009.04.29)
- 読売新聞: 『理工系博士号持つ“非正規”、経産省が就職支援へ』(2009.01.28)
- 『売られる博士号』(2008.01.07)

コメント
初めまして。素敵なご説明のトラバ、ありがとうございました。
つい、日常感覚の泥臭さで考えても、明らかに発想がヤバイ!と思って書いてしまいました。
このように考えるものだったのですね!そういえば、聞いた覚えがあるような…とても参考になりました。
投稿: ののん | 2011年10月23日 (日) 00時45分