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日経産業新聞: 先端人 佐古和恵氏

日経産業新聞の2010年6月24日(水)付けの第12面の「先端人」というコラムで、NEC主席研究員の佐古和恵さんが紹介されていました。ウェブで記事を見つけられなかったので、以下、引用しながら内容を紹介していきます。

まずは導入。匿名認証機能を持つグループ署名の紹介から。

ネット決済や電子署名などに使われ、日常生活に欠かせない暗号技術。本人確認や安全確保に不可欠だが、個人情報の悪用などの心配がつきまとう。性能は落とさずに不安を除こうと、NEC主席研究員佐古和恵(46)は「グループ署名」と呼ばれる技術の開発で国際競争をリードする。

「きちんと認証できるうえに個人情報が漏れる心配のない携帯電話やICカードが作れそう」--。佐古が試作したばかりの1ミリ角ほどの大規模集積回路(LSI)チップを見せてくれた。

チップには個人情報を直接使わずに本人を認証できる「匿名認証」という演算処理機能を世界で初めて組み込んだ。複雑な処理にもかかわらず、認証に必要な時間はわずか0.1秒。長年の研究が結実しようやく実用レベルに達した。

佐古さんたちの研究グループがグループ署名LSIの開発に成功したのはこの辺の話でしょうか。アルゴリズムの詳細はわかりませんが、楕円曲線・ハッシュ関数あたりが必要なのでしょうから、0.1秒という時間は単純にすごいと思います。

次は肝心のグループ署名の説明。

匿名認証は正式にはグループ署名と呼ばれる。佐古が世界に先駆けて1996年から取り組んできた新しい暗号技術だ。

現在、ICカードなどで最も広く使われているRSA暗号は情報の暗号化と復元の際に、それぞれ別の「鍵」を使うので安全性は高い。だが、鍵を作るために必ず個人情報を使用する。買い物や改札通過などの履歴がコンピューターに残り、「監視カメラで常に撮影されているようなもの」と佐古は説明する。

これに対し、グループ署名は氏名や生年月日などの個人情報を使わない。会社や居住する市町村など所属だけを確認して決済できる。有望な暗号技術ながら、成り済まし【杜撰な研究者注:本文のママ】を防ぐためにRSA暗号より複雑な演算処理が求められ、実用的ではないとされてきた。

90年代後半というと、まだRSA暗号専用LSIも実現が厳しい時代ですね。確かに当時にグループ署名の実装は厳しかったと思います(遠い目)。

次は佐古さんご自身の紹介。

だが佐古は「暗号が生活に根付くためには必要な技術」と確信。不可能と言われてきた膨大な演算アルゴリズムを、実用レベルに最適化した。

もともと、答えが1つに決まる数学理論の美しさに引かれて暗号研究の道へ進んだ。ペンとノートさえあればよく、考えることが何よりも好きな学生だったという。やがて「自分の理論を具体的な製品に」という気持ちが芽生え、メーカーに就職した。

入社後は猛烈に論文を書き続け、最も引用される論文トップ100位に入る常連研究者として国際的に認められるようになった。一方で、考案した暗号アルゴリズムを何とか製品に応用しようと電子投票や抽選システム向けに提案してきた。

「どんなに理論的に優れたアルゴリズムを考えても社会で使ってもらわなくては意味がない」というこだわりがある。常に「生活者視点の暗号」をこころがけている。

「生活者視点の暗号」ってはじめて聞きました。でも重要な観点だと思います。佐古さんの紹介はまだまだ続きます。

社交性と英語力を生かした”研究外交”にも定評がある。小・中学校時代を米ニューヨークで過ごし、流ちょうな英語を話す。国際学会でも積極的に発言。RSA暗号発明者の1人、米マサチューセッツ工科大学教授のロナルド・リベストなど著名研究者にも一目置かれるようになった。

駆け出しの頃から佐古を知る中央大学研究開発機構教授の辻井重男は「日本人には珍しく国際会議でも物おじしない貴重な人材」と評する。

佐古さんってスーパー研究者だったんですね。片鱗は存じ上げていたつもりだったのですが...

グループ署名は米欧でも研究が活発化。国際標準化機構(ISO)で規格づくりが本各化するまでになった。標準化作業チームのリーダー役に、佐古は日本人では初めて抜てきされた。米マイクロソフトやIBMの研究者らと複雑な利害関係を調整する難しい役回りだが「グループ署名を世に出すためなら労は惜しまない」と全力投球する。

長男が通う中学校の行事にも率先して出掛け、授業でも暗号の話題を紹介するなど、子どもたちへの啓蒙(けいもう)活動にも余念がない。息抜きは国際学会で訪ねた様々な土地の民族舞踊を踊ることだ。

佐古さんが踊っているのをまだ拝見していないです!次に佐古さんにお会いするときの見方がいろいろと変わりそうです。

なお記事にはこの他に佐古さんの主な業績と、簡単な略歴が書かれていますが、ここでは特に触れていません。

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